東京労災審査官は、ブレーキ製造の労働者の肺がんについて、認定基
準を救済の基準として総合的に判断して、石綿関連肺がんと認めました
。女性労働者で20年近く前に亡くなり,医学的資料はありませんでし
た。息子さんが子供の頃、お母さんが石綿をはたいてから抱っこしてく
れた事を覚えていました。審査官は、会社の社長からレントゲンを借り
出し、社長に石綿を吸った証拠胸膜肥厚斑がある、従業員はもっと吸っ
ていたに違いない、ということで因果関係を確認しました。
愛知審査官は、自動車製造業の労働者について、解剖して『胸膜肥厚
』とあるのに、認めませんでした。奥さんは、主治医から何の仕事をし
ていたのですか、ひどい肺の状態です、と言われたそうです。筆者が当
時の主治医に直接確認したところ、その所見は石綿を吸った証拠胸膜肥
厚斑でしょう、と答えてくれたのに。
肺がんの場合、胸膜肥厚斑が決定的です。手術や解剖のときにさえ、
肺だけ重視して、胸膜・肋膜・横隔膜を確認せず、大事な証拠が見逃さ
れる事があります。
労災事務官が、労働者保護のため公務員として頑張るか、被災者切り
捨ての具となって社会保険庁のようになるか、岐路に立たされていると
いえます。
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