職業病の原因は,複数あります.たとえば,肺がんなら,石綿
作業者でタバコを吸っている人もいます.石綿もタバコも原因で
す.複数原因があるのです.
厚生労働省の『労災保険 業務災害及び通勤災害認定の理論と
実際』にそのことが書かれています.職業病の原因は相対的有力
原因説で認定します.
石綿も相対的有力原因,タバコも相対的有力原因です.タバコ
があるから認めないということではありません.
理論と実際は戦後何回も改訂されました.職業病の認定は相対
的有力原因説であり,最有力原因説ではないと,ずっと書かれて
います.ところが,はじめの版にあった仕事と別に相対的有力原
因があっても,職業病であることが妨げられないという文言が途
中で省かれました.
趣旨は変わらないし,理論と実際の例では血友病と大量出血死
のことが載っています.仕事で血友病患者が機械にはさまれて,
普通の人なら大量出血しないのに,患者が大量出血死しても労災
というものです.血友病が共働原因になっていても,労災である
ことを妨げないという文言は残っています.
つまり,本来はタバコのような相対的有力原因,血友病のよう
な共働原因があっても,業務が相対的に有力であれば認定するの
であって,業務が最有力である必要はないということなのです.
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